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第一話　地球人の皆様へ

私達は、地球から５２億光年も離れた【ケルン星】からやってきました。

ケルン星は、地球の4分の1位の大きさで温暖な気候、なだらかで広い草原には色とりどりの花が咲き、奇麗な小川が流れていて、空も雲も美しく2つの太陽はいつも明るく照っていて、夜はありません。 ケルン人は心やさしく幸せで、もめ事や争い事は一切ありませんでした。遊びが大好きで色んな遊びを考えては，皆で集まっていました。 心に思った物をすぐに形に出来るので、 ｛一番、美しいと思う物は？｝とか 「一番楽しいと思うことは？」 などとテーマを出し合って、思い、思い形にしたものを見て喜んだり感動したりしていました。 私達は性別も老化もなく、十三歳のままです。もちろん病気もしません。皆、元気に楽しく過ごしていました。。。 ある時、ケルン星に隕石が接近し、このままだと衝突はまぬがれないと、私達は皆パニックになりました。 脱出しようにもケルン星には遊び用の小さなロケットのみ、無事に着陸するかも定かではありません。 「私達はどこに行けばいいんだ？」 「何をすればいいんだ？」 永遠だと思っていた平和な生活があっという間になくなってしまう。長い時間をかけて作りあげた幸福や思い描いた世界が本当はもっと違う圧倒的に強く単純な力で動いていると思い知らされた絶望感でいっぱいになりました。 この美しい星、楽しい星、この星を創っている同じ力がこの星をなくそうとしているのを受け入れることが出来ません。 元々ケルン星は、科学者や心理学者がいろいろ研究して、ほぼ完成した理想郷だったのです。 そんな中、どうやら銀河系の反対側には、ケルン星によく似た星・地球が存在して、ケルン人によく似た心の優しい人類がいるらしい！」 ということが解ってきました。 「そうだ、地球に行こう！」 優秀な科学者の一人が声を上げました。 私達はワープ出来るのですが、心を許し合えた人同志か、心にしっかり焼きついた場所にしか行けません。そんな遠くで、初めての場所にたどり着く事が出来るのかまったく解りませんでしたが、勇気を持って科学者を信じてついていくことにしました。 科学者を始めとする私達ケルン人は地球の写真を探しましたが見つかりません。 時間もないのでケルン星と同じイメージにして。後は皆思い思いに大事なものを一つだけ持って、大急ぎでケルン星を後にしました 元々冒険好きで明るい性格の私達です。ドンドン明るくなって暑くなってライティングされたジェットコースターの渦の中のような所をものともせずに進んで行きました。 私達と同じように信じる心を持つお友達に会いたい気持ちでいっぱいでした。 窮屈で暑い長い長い旅でしたが、地球が見えてきました。白く薄い雲にすけて見える青い地球がライトアップされたように光っていて、あまりの美しさにケルン星を奪った大きな力への受け入れがたい思いがスーと消えて。その替わりに大きな喜びと感謝の心でいっぱいになりました。 近づくと地球は青とグリーンの星でした。 私達は出来る限りケルン星に似たグリーンの広い所を選んで着陸しました。 草原だと思って降りた所は飛騨の杉林でした。まっすぐで、トゲトゲした広い林のなか をパラパラと木にひっかかりながら降りていきいきました。 さすがにクタクタに疲れていましたが、明るい空とまっすぐな木々、川のゴウゴウと流れる音、ケルン星よりもスケールの大きな景色に感動して、持ち前の冒険心と遊び心でワクワクしてきました。 まわりを見ながら並んで山道を下って行くと【白川郷】と看板の出た三角屋根のわらぶきの家が並んでいて、ちょっとした広場に出ました。 初めての場所なのに、懐かしいような、前から知っていたような不思議な感覚 「良かった！地球に来れて！」 科学者がまず「ワァーオ、ワァーオ」と喜びの叫びです。皆も一緒になって、「ワァーオ、ワァーオ」と叫びながら輪になって、肩を組みあい、即興の歌の合唱です。 ひとしきり喜びあった後、円座になって、持ってきた物を出して見せあいが始まりました。 まずはピンクのハートです。 ケルン星では、すべての基準はハートです。元気が出る言葉や優しい心になれる言葉をもらった時、感謝の心を表したい時、楽しい遊びを教えてもらった時、感謝と喜びの深さ分をピンクのハートに貯めます。ハートの預金ピンクです。これは持っているだけで自然に感謝する人にもされる人にも同じだけ蓄えられます。 ただし、変な競争心や嫉妬心を持つと両方から貯めたハートが消えていくので、これだけは要注意です。自分が思わなくても相手が思うと自分の分まで消えていくのです。ピンクのハートがたくさん貯まっている人は、優秀な人となり、尊敬されます。また病気にもならず、年もとりません。 次がゴールドのハートです。 これはイメージや新しい物の開発、勇気ある行動や創造などです。 私達ケルン人は皆見たことのある物や考えたものなどをすぐに形にすることが出来ますが、今まで無かった物、よりすぐれた発想などが出来た時にゴールドのハートを貯めて行くことが出来ます。 身近にあるのに誰も見つけなかった花の発見や。決して病気にならない方法の発見などは、高ポイントで貯まります。ピンクのハート同様、ゴールドのハートもヒントを与え人にも同じように貯まりますが、病気になるような物や人をダメにするような想像はやはりハ―トが消えていくので、決してやってはいけません。 次は白いハ―トです。これは信じる心です。未来を信じる心、自分を信じる心、まずは本当の自分の心が解っていないと正しく信じることが出来ません。 １３才までの自分も未来も素直にあると信じられる心と目標に向かって進む時の信じる心、どれもハート預金ホワイトに蓄えられます。これも信じる相手にも自分にも同じように貯められます。 ただし、途中で疑ったり、信じられなくなるとハートが消えていきます。これも相手も同じように消してしまうので、気をつけなくてはいけません。常に１３才のピュアな心になって信じる相手を見なくてはいけません。 ３つめまで出して見せあっているうちに、まわりがオレンジ色になっていました。気がつくと山と山の間に太陽が沈んで行きます。ケルン星はいつも明るく、同じ位置に太陽があったけど、地球は太陽が動くんだと皆びっくりしました。 明るさも地球の方が優しい感じがすると皆で喜び、初めて見る地球の美しい夕日に見とれていました。 その時です!! 「どこから来たのかね？」 と声をかけられました。初めて会う地球人です。あんなに会いたかったのに、想像していたよりはるかに大きく、しかもケルン星では見たこともない程大人です。緊張と驚きのあまり固まっている私たちをジロジロ見て、 「後ろに乗りな」 と言いながら、ひょいひょいと私達をトラックの荷台に乗せてしまいました。 トラックはすぐに発車して、山道をくねくねと走って行きます。まわりはもう暗くて、何が何だかさっぱり解らないままの初めての車はグルグルとまるで円を描いているようで、先に進んでいるようだけど、同じ所を回っている様でもあり、程よい暖かさと揺れ具合に私達は皆ぐっすり眠ってしまいました。 おじさんの野太い声に私達は目を覚ましました。おじさんは私達を残したまま、スタスタと家の中に入っていきます。 「ワアーイ、ワアーイ、お友達だって！」 可愛い女の子と男の子が家の中から走って出てきました。 金髪のくりくりと巻いた髪と青とグリーンの混じった奇麗な目、背の高さも何もかも同じなのに、男の子と女の子と解ったのは、その服装のためです・ 女の子はピンクのワンピースでスカートが二段のフリルになっていて、下側のフリルとウェストのサッシュが濃い緑で、頭にも同じピンクとグリーンで作られた大きなリボンをつけ足元のソックスにも同じ色のレースが使ってあり、端々に細いゴールドのテープがついていて、本当に可愛らしい服装でした。 男の子は白いレースのついたブラウスに濃いブルーの短い上着、おそろいの短いパンツの端々にシルバーのテープが使ってある、こちらは男の子らしい可愛い服装でした。 二人は私達の手を取ると家の中へ連れていってくれました。家の中は暖かく、マキストーブが燃えて、床にはフカフカのじゅうたんが敷いてあり、おじさんが座り心地の良さそうな大きな椅子に座って、膝には可愛いリスザルが乗っていました。それまではおじさんの顔を見てなったので、おそるおそる、おじさんの顔を見てみると、大きな体に優しそうな眼、大きいのにふっくらエクボのある手、なんとも暖かく感じる人でした。 大きなテーブルの上には、大きな手作りのケーキが乗っていました、 「今日はおじいちゃんの誕生日なの。ママが東京から来ていたんだけど、御用が出来て帰ってしまったの。だから一緒に祝ってね」 二人は、本当に嬉しそうです。 「私はマイ子よ。お兄ちゃんはユージ。おじいちゃんはハジメっていう名前よ。あなたたちはどこから来たの？名前は何て言うの？」 「ケルン星から来たんです」 代表して科学者が答えます。 「私達の星では、性別も年齢も名前もありません」 「じゃあ、ケッパちゃんにしましょう」 マイ子ちゃんがちょっとお姉さんの顔をして言いました。 「ケッパちゃん達、今から一番のお友達よ」 マイ子ちゃんが手を伸ばしてきました。 「アッ」これは私達と同じだ。遠いケルン星と同じ表現方法に心を打たれました。 つづく…